大西配列に入門してみた話

大西配列に入門してみた話

大西配列を使いこなしてキーボード入力を効率化できないかなと思い、これの練習と考察をしてみました。

大西配列とは

大西拓磨氏が提案しているキーボード配列です。具体的にはこういう配列です。

以下、紹介文を本家のページから引用します。

    『大西配列』は、QWERTYに代わる新しいキーボード配列の選択肢です。日本人がローマ字をもっとも入力しやすいように100万字の統計から開発され、QWERTY配列と比べて指の移動距離は約52%、同じ指の連続は約88%減少します。お使いのキーボードにも無料で導入でき、いつでも元に戻せます。

大西配列

取り組みの狙い

  • 大西配列キーボードでそれなりのスピードで入力できるようになる。
  • QWERTY配列とも両立させる。(linux シェルや、viエディタは環境を操作することもあるので両方使えるようになる。)

練習環境

練習環境には、タイピング速度測定(タイ速)をつかいました。

タイ速は、

  • ミスタイプへのペナルティがない。(ミスタイプでのタイムロスはペナルティとなる。
  • 数字や句読点が入った例題がない。
  • 例題が人を笑わせようとしてしていてふざけている。

という短所があるものの、

  • 1回30秒であり、スキマ時間に練習できる。
    • 評価のフィードバックサイクルが短い。
    • 初心者にはすぐ評価が出るのが嬉しい。
  • 成績データを採取しやすい。
  • 例題が人を笑わせようとしていて楽しい。

ということでこれを使いました。

これを、1日1時間練習します。1回30秒なので、1日120回を標準ノルマとします。打鍵数の記録は毎日別々に集計します。お題は毎日別の月の物を選ぶようにします。

練習結果

記録を取り始めて1ヶ月少々の間、日毎タイプ数の上位20件の箱ひげ図と、平均値をグラフ化しました。点線は3次の多項式での近似です。練習できなくて成績が悪かった日は除外してあります。

練習当初は全く打てなかったので、キーボードの画像を見ながら練習しました。途中から画像を見ないようにしたので13日目に打鍵数が落ちています。自己ベストは122でした。毎日上達していますが。まだまだですね。
実利用をした感触だと、文書を打てなくは無いですがまだたどたどしかったり、ミスタイプもそれなりにあるように思います。vi エディタを使うときや、急いでチャットを打つとき以外は大西配列でやれています。

本家サイトでは、

使い込んだ配列の速さを超えるのは100時間を過ぎたころです。

大西配列

とのことなので、もっと続けてみようと思います。タイ速はミスタイプのペナルティがないので他のツールを探そうと思います。

やってみた感想

全体的な印象

QWERTY配列だと「指を持ち上げて狙いのキーに落とす」みたいな動きもあったのですが、大西配列だと手指の動きが小さくなってコンパクトになった気がします。楽に打てているような気がしていて、使用頻度の高い文字がホームポジション中段にある恩恵がでています。

打鍵速度や正確性は、QWERTY配列に全然及んでおりません。練習不足といえばそれまでですが、それと同時に、QWERTY配列では大部分の入力が無意識の手癖で打てていたことに気付かされました。いわゆる熟語ぐらいの長さは手の動作パターンで覚えている面が強く、このパターンの範囲で入力しているときは個別の文字は意識されません。大西配列でもこういう動作パターンが身につくまでは練習が必要そうです。

両立できているかという点では、今現在ではQWERTY配列で入力すると遅くなっている感じです。QWERTY配列のリハビリが必要かもしれません。ただ、Linux のコンソールに向かうとコマンドはパターンで打っているせいか意外と普通にQWERTYで操作できますし、QWERTYのほうが速いです。使い分けの考え方につながりそうです。

QWERTY配列と比べた指ごとの負荷の変化

練習していると、姿勢のせいもあるかもしれませんが左手薬指や左肩甲骨の端が痛むなと感じることがありました。どうしてだろうと思って調べてみました。

QWERTYでは、左薬指の負担率(担当するキーの文字使用率合計)は、6.53 % でした。W と S で、 1.37 + 5.16 = 6.53 です。
大西配列では L と I で、10.24% になります。単純に1.5倍ですね。数字は大西氏のデータによります。

文字使用率:https://docs.google.com/spreadsheets/d/1oH5HyNHgfbCWru9Ik2_oT5YEHqH4OQ6pNgFaDnX23Is/edit#gid=0

ふと思って左中指についても調べました。
QWERTYでは E と D で、6.10 + 2.13 = 8.23 %
大西配列では U と A で、8.50 + 13.11 = 21.61 % 
になります。

左薬指と左中指の合計だと、QWERTYで 14.76 % (= 6.53 + 8.23)だったものが、大西配列では 31.85 % (= 10.24  + 21.61) になりました。2倍になってますね。

全指についての比較表はこれです。QWERTYではあまり使ってなかった左薬中指を、母音を左手にしたことで使うようになったということだと思います。

QWERTYでは右人指し指が6文字で 25.59 % カバーしています。右手は上段のキーの利用が多いので、それに比べれば全体的には平準化されていると思います。

もし仮に変更案があるならば、U と E を替えても良かったかもしれません。2.4%分負担率が平準化されるのと、母音の並びも覚えやすくなるかもです。Eの位置もQWERTYと変化しません。

大西配列としては指の連続使用を減らす、母音の連続頻度を下げる、という狙いでこうなっています。大西配列をマスターしたらこの方が打鍵効率は高いかもしれません。
参照:ローマ字入力に最適なキー配列を考える(制作編)

普及の可能性について

日本語の入力としてはおそらく最適な配列であろうと思います。ただ、日本語の入力に最適化していることは、英語圏の人には全くアピールポイントが無いかもしれません。英文の入力に特化した配列では Dvorak配列 というものがあります。こういう配列のほうがまだ受け入れてもらえそうです。

日本語と英語以外の言語ではどう言う状況かと弊社の同僚に聞いてみたところ、キー配列はQWERTY 配列が基本のようです。アルファベットと各言語の文字との対応ルール(日本語で言うローマ字かな変換)があり、その対応に従って各言語の文章を入力するそうです。

すなわち、新しいキー配列の普及を考える際は、全世界でシェアが取れているQWERTY 配列と争うことになります。そして、全部が無理なら部分的シェアをとろうとしたとして、特定の言語への最適化しようとすると、別の言語からは支持されなくなります。

厳しいですね!大西配列がどうという話でなく、相手は既にシェア独占できていて、切り崩すのも難しそうです。

QWERTYの打鍵効率が悪いことは多くの人々が賛成するところだと思いますが、全世界的に同じ配列が普及していることと、キーボードを使う人間の方は効率が悪い配列でも悪いなりに適応出来てしまっていることと、乗り換えのトレーニングコストが一定程度あるということから、新しいキー配列の普及は難しいものになりそうです。

となると、現実的にはQWERTY配列と新しい配列の両方の並びに慣れておくことになると思います。個人的には引き続き大西配列をやり込んで行こうとおもいます。

興味を持った人方向け、配置を覚えるコツ

ホームポジションの人差し指は、 O と T です。配列作者のイニシャルと覚えると良いでしょう。(よくできた偶然ですね!)また、あなたのイニシャルや、名前を打ったときにどのキーを使うか確認すると良いと思います。世の中にタイピングソフトはたくさんありますが、あなたの名前が出てくることはないと思います。

左手はほぼ母音なので丸暗記になると思いますが、右手は担当するキーが多いです。語呂合わせなどどうでしょうか。

  • FWRYP ふぅらいぴ フライドポテトです。
  • KTNSH ことんしぇ 小さいものが落ちる擬音と、擦る擬音です。
  • GDMJB ごっどMJB 神様のコーヒーです。MJB はコーヒーのブランドです。

また、上段の W,R,Y は、や行ら行わ行 の逆順だと知っておくと良いかもです。

まとめ

本記事では大西配列をやってみた様子を書きました。QWERTYほどの速度はないですが、1ヶ月ほどの練習で日常使いできるレベルになりました。日本語を楽に打てている感触がありますが、新しいキー配列が普及するには色々な困難がありそうです。

このページのテキストは、すべて大西配列で書かれています。

おまけの参考資料

キーボードはなぜ不規則な並び方?

こちらの動画でQWERTY配列の並びにの由来について解説されています。全体的な効率のことは考えられていないようですね。

AutoHotkey v2.0 設定ファイル

大西配列の本家サイトでは  
AutoHotkeyの設定ファイルが公開されています。これは v1.1のもののようです。そこで、 v2.0 向けのファイルを作りましたので置いておきます。一応、無保証無責任でお願いします。

https://gist.github.com/kazurof/13b7044fc27a5fc6e7c2bb03d075b253

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