ソフトウェアアーキテクチャの進化について調べてみた

ソフトウェアアーキテクチャの進化について調べてみた

皆さんこんにちは、システム部のLeeです。
今回は、ソフトウェアアーキテクチャの進化について調査しました。

モノリシックアーキテクチャから始まり、マイクロサービスアーキテクチャ、そしてモジュラーモノリスアーキテクチャに進化していく過程を説明していきたいと思います。

また、現在GMOリサーチ&AIで導入しているアーキテクチャを紹介するセッションもございますので、どうぞお楽しみください!

モノリシックアーキテクチャ

モノリシックアーキテクチャとは

モノリシックアーキテクチャという名前は、英語で「単一の巨大な塊」という意味を持つ「Monolithic」から来ています。伝統的なソフトウェアアーキテクチャであり、現在でも開発アプローチとしてよく採用されています。

モノリシックアーキテクチャには大きく3つの特徴があります。

  1. アプリケーションの全機能が単一のプログラムに組み込まれる。
  2. アプリケーションのデータが単一のデータベースで管理される。
  3. アプリケーションの各機能が密結合する。

なるほど、アプリケーションが一つの大きな単位で構築されるイメージですね。

その一方で、モノリシックアーキテクチャは大規模システムでいくつかの問題を抱えています。次のセクションで詳しく見ていきましょう。

問題点

モノリシックアーキテクチャが抱えている問題点は次の通りです。

1.スケーラビリティの制限
アプリケーション全体が一つの単位として動作するため、特定の機能やコンポーネントだけを独立してスケールすることが難しくなります。スケールが必要な場合、システム全体をスケールする必要があり、リソースの無駄が生じやすくなります

2.障害耐性の低さ
アプリケーション全体が一つの単位として動作するため、ひとつのコンポーネントに問題が発生すると、システム全体が影響を受けやすいです。このため、障害が発生した場合に全体の信頼性が低下します。

3.開発の非効率化
アプリケーションが肥大化するにつれてコードベースが複雑になり、ビルドやデプロイに時間がかかるようになります。また、複数のチームが同時に開発を行うと、コードの競合や統合の問題が発生しやすくなります。

4.技術的負債の蓄積
長期間にわたり開発が続くと、古い技術やアーキテクチャに依存する部分が増え、新しい技術への移行が難しくなる場合があります。これにより、技術的負債が蓄積され、技術的な改善が難しくなります。

なるほど、アプリケーションが成長するにつれて、スケーラビリティや柔軟性が課題となっていることが分かりました。これらの問題に対処するために、メリットをもたらす別のアーキテクチャへ移行する開発現場が増えつつあります。

モノリシックアーキテクチャが直面している問題を解決するために、次に登場するのが「マイクロサービスアーキテクチャ」です。

この進化したアーキテクチャが、どのようにソフトウェア開発の柔軟性と効率性を向上させるのでしょうか?次のセクションで詳しく見ていきましょう。

マイクロサービスアーキテクチャ

マイクロサービスアーキテクチャとは

マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なアプリケーションを複数の小さな、独立したサービス(マイクロサービス)に分割して開発・運用するアーキテクチャスタイルです。

マイクロサービスアーキテクチャには大きく4つの特徴があります。

  1. アプリケーションが複数の小さなサービスに分割される。
  2. 各サービスを独立して開発、デプロイ、スケールできる。
  3. APIやメッセージングキューを通じてサービス間の通信が行われる。
  4. 各サービスが独自のデータベースを持つ。

なるほど、アプリケーションを複数の独立したサービスに分割し、個々のサービスを独立して管理できる点が特徴ですね。

これにより、モノリシックアーキテクチャが抱えていた拡張性の制限、一括デプロイによる柔軟性の欠如、技術スタックの単一性、システムの障害時の影響範囲の大きさ、チームの生産性への影響といった問題が改善されました。

さて、マイクロサービスアーキテクチャはどのような状況で強みを持っているのでしょうか?次のセクションで詳しく見ていきましょう。

導入するタイミング

マイクロサービスアーキテクチャは、次のような状況で適していることが多いです。

1.大規模のプロジェクト
アプリケーションが非常に大きく複雑な場合、マイクロサービスに分割することで管理しやすくなり、スケーラビリティの問題を解決できます。

2.迅速な開発プロセスが求められる場合
マイクロサービスごとに独立して開発・デプロイできるため、新機能の追加や変更が迅速に行えます。

3.異なる技術スタックを使用する必要がある場合
異なるマイクロサービスが異なる技術やプラットフォームを使用することで、最適な技術選択が可能になります。

4.チームが分散している場合
チームが複数に分かれている場合、マイクロサービスごとに担当を分けることで、チーム間の協力が効率的に進められます。

なるほど、マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なプロジェクトや迅速なリリースが求められる場合に適していることがわかりました。

更に言えば、マイクロサービスアーキテクチャはビジネスのニーズに応じて個々のコンポーネントを独立してスケールアップまたはスケールダウンできます。そのため、需要変動が大きい現代ビジネスに柔軟に対応できるという大きなメリットがあります。

もちろん、マイクロサービスアーキテクチャにもいくつかの課題は存在しますが、それでもなお、現代のソフトウェア開発において非常に人気のあるアプローチです。

BFF(Backend for Frontend)

実は、GMOリサーチ&AIも「BFF」というマイクロサービスアーキテクチャを導入しています。BFFアーキテクチャについて、簡単に紹介します! 

皆さん気づきましたか?

そうです。BFF(Backend for Frontend)アーキテクチャとは、フロントエンドアプリケーション(例えば、ウェブアプリ、モバイルアプリ、デスクトップアプリ)のニーズに特化したバックエンドサービスを提供する設計パターンです。

それぞれのフロントエンドアプリケーションには異なるニーズと要件があるため、BFFアプローチを使用することで、各フロントエンドに合わせたカスタムAPIエンドポイントを提供します。

これにより、各フロントエンドは効率的かつ効果的に動作することができます。

問題点

その一方で、マイクロサービスアーキテクチャは以下のような問題を抱えています。

1.ネットワーク遅延と障害
サービス間通信がネットワークを介して行われるため、ネットワーク遅延がパフォーマンスに影響を与える可能性があります。また、ネットワーク障害が発生した場合、分散環境でのデバッグが難しくなることがあります。

2.複雑性の管理
サービスの独立性とデプロイの柔軟性を提供しますが、その分、システム全体の複雑性が増します。サービス間の通信、データ整合性の問題、障害対応などが複雑になり、大規模なシステムでは管理が困難になることがあります。

3.デプロイおよび運用コストの増加
各サービスを独立してデプロイできるため、CI/CDパイプラインの設定や運用が各サービスごとに必要になります。これにより、インフラ管理やデプロイの複雑性が増し、コストが高くなることがあります。

4.データ整合性の課題
各サービスが独自のデータベースを持つため、データの整合性を維持することが難しくなります。

なるほど、マイクロサービスアーキテクチャはサービスの独立性やデプロイの柔軟性を提供する一方で、システム全体の複雑性が増す課題があることが分かりました。

特に、サービス間の通信やデータ整合性の問題、障害対応が難しくなることが指摘されています。また、CI/CDパイプラインの管理コストや、ネットワークオーバーヘッドやデバッグの難易度が上がる点も課題となっています。

こうした課題に対処するために、開発現場では新たなアーキテクチャを採用する動きが見られます。次のセクションでは、モジュラーモノリスアーキテクチャがどのようにこれらの問題を解決し、ソフトウェア開発を効率化するのかを見ていきましょう。

モジュラーモノリスアーキテクチャ

モジュラーモノリスアーキテクチャとは

モジュラーモノリスアーキテクチャは、モノリシックアーキテクチャの一種ですが、アプリケーションを複数のモジュールに分割して開発と管理を行うスタイルを指します。

ここで「モジュラー」とは、システムを独立した機能単位(モジュール)に分割することを意味し、「モノリス」とは、それらのモジュールが一つのアプリケーションとして統合されていることを意味します。

モジュラーモノリスアーキテクチャには大きく4つの特徴があります。

  1. アプリケーションの全機能が単一のプログラムに組み込まれる。
  2. アプリケーションのデータが複数のデータベースで管理される。
  3. アプリケーションの各機能が複数のモジュールに分割される。
  4. アプリケーションの各機能が疎結合する。

なるほど、モジュラーモノリスアーキテクチャは、アプリケーションの複雑性を抑えつつ、効率的な開発と運用を実現することができる点が特徴ですね。

これにより、モノリシックアーキテクチャの課題を改善しつつ、マイクロサービスアーキテクチャが抱えていた複雑な分散管理やデプロイの課題も改善されました。

さて、モジュール構造を持つモジュラーモノリスアーキテクチャは、どのような場合に使うべきなのでしょうか?次のセクションで詳しく見ていきましょう。

導入するタイミング

モジュラーモノリスアーキテクチャは、次のような状況で適していることが多いです。

1.中規模から大規模のプロジェクト
アプリケーションが成長し続けることが予想されるプロジェクトにおいて、機能ごとにモジュール化することで管理しやすくなり、開発と運用が効率化されます。

2.複数のチームによる分業が必要な場合
モジュールごとに独立した開発が可能なため、複数のチームが同時に開発を進めやすくなります。これにより、コードの競合や統合の問題が軽減されます。

3.複雑なマイクロサービスに対応するリソースが限られている場合
チームの規模が小さい、またはマイクロサービスの複雑な管理に対応するためのスキルやリソースが不足している場合、モジュラーモノリスは適した選択肢です。シンプルな構造を維持しながら、必要に応じて徐々に拡張することが可能です。

4.デプロイと運用のコストを抑えたい場合
単一のアプリケーションとして運用されるため、デプロイやインフラ管理の複雑性が低く、運用コストを抑えることができます。

なるほど、モジュラーモノリスアーキテクチャは、中規模から大規模のプロジェクトの開発に適しており、迅速なリリースが求められる状況でも強みを持っていますね。

特に、マイクロサービスアーキテクチャへの移行コストが高すぎる場合や、通信速度の制約から非機能要件を満たせない場合に、妥当な折衷案として採用されることが適していることが分かりました。

問題点

モジュラーモノリスアーキテクチャは、システムの構造をモジュール化することで開発や保守を容易にする一方、いくつかの課題を抱えています。

1.スケーラビリティの制約
モジュールごとにスケールすることができるものの、全体のアーキテクチャがモノリシックであるため、個々のモジュールのスケールが難しくなることがあります。特定の機能の負荷が高くても、システム全体をスケールする必要があるため、リソースの効率的な使用が難しくなります。

2.ビルドやデプロイの複雑さ
モジュールが増えると、システム全体のビルドやデプロイが複雑になることがあります。モジュールの数が増えると、それぞれのモジュールの依存関係を管理しながら全体をビルド・デプロイするのが難しくなり、デプロイメントプロセスの効率が低下する可能性があります。

3.障害の影響範囲
モジュールが独立しているとはいえ、システム全体が密に結びついているため、あるモジュールの障害が他のモジュールにも影響を及ぼすことがあります。これにより、障害の影響範囲が広がり、システム全体の信頼性が低下する恐れがあります。

なるほど、トラブルシューティングやスケーラビリティに課題があるほか、ビルドやデプロイも煩雑になる問題があるんですね。また、障害が発生した際に、その影響がシステム全体に広がりやすい点も懸念されます。

それでも、モジュラーモノリスアーキテクチャは、マイクロサービスアーキテクチャほどの分散管理の複雑さを伴わないため、開発者にとって理解しやすく管理しやすい構造を持っています。

そのため、マイクロサービスアーキテクチャの折衷案として、多くの開発現場で採用されているアーキテクチャスタイルです。

まとめ

モノリシックアーキテクチャ

モノリシックアーキテクチャは、伝統的なソフトウェアアーキテクチャです。

シンプルな構造で小規模から中規模のプロジェクトに適していますが、スケーラビリティや障害耐性の問題が発生しやすく、大規模なシステムには向いていません。

マイクロサービスアーキテクチャ

モノリシックアーキテクチャの問題を解決するために、マイクロサービスアーキテクチャが登場しました。

マイクロサービスアーキテクチャは、各サービスを独立して開発・デプロイ・スケールできるため、大規模なプロジェクトや迅速な開発プロセスが求められる場合に適しています。

また、異なる技術スタックを使用することも可能で、分散したチームの協力も効率的に進められます。

モジュラーモノリスアーキテクチャ

マイクロサービスアーキテクチャの問題を解決するために、モジュラーモノリスアーキテクチャが登場しました。

中規模から大規模プロジェクトや複数のチームによる開発、マイクロサービスの導入コストが高い場合に適しています。

結論

各アーキテクチャにはそれぞれの強みと弱みがあり、プロジェクトの規模や特定の要件に応じて適切なアーキテクチャを選択することが重要です。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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